深緑

チュウチュウチュウベイビー。

約10年。
私が彼と付き合い始める前から含めて
約10年なんやかんや近くにいる。

そんな彼は今年の夏に
私が人生で初めて行ったフェスに出る。

バンドマンの彼女って枠は
本人ではないから頑張ってもいないし
本人ではないから調子にも乗りにくいし
本人ではないから才能だってない。

私は、本当は、今でも
自分の言葉と声で歌が歌いたい。

でもね、才能がなかったよ。
才能がなかったし、
その世界に飛び込む勇気もなかった。

歌が上手い、音楽に詳しい女の子。
って枠から飛び出す勇気がなかった。
上手いかどうかは分からないのだけれど、
自信だけは人一倍、今でもあるんだ。
嫌な女だ、嗤っちゃうね。

亡くなってしまった可愛い後輩は
ありすさんの歌声が好きっていつも言ってくれて
カラオケ行きましょう!っていつも誘ってくれて
これ聴きたいから歌ってください!って
次から次へと曲を入れてくれた。
私が歌ったステージを見て泣いてくれた子もいた。
私が歌ったステージを見て何年も後に
あれが最高のライブでしたって言ってくれた子もいた。
ぜんぶ、ぜんぶ、コピーバンドでした。

私は、私は、
人の歌を歌って真似ることしか出来ません。
でも私の好きな人は
自分で曲を作ってギターを弾いています。
すごいなあ、憧れちゃうねえ。

バンドに夢を見ていた少女は
大人になった今、初めてレコーディングにも参加しました。
彼のバンドとは違うのはご愛嬌。
彼と仲の良い最愛の仲間達だよ。
彼らを見てプロみたいってぽけーっとしてしまった。
いつもは彼も彼らもわちゃわちゃしていて
可愛い男の子達なのに
プロみたいだった。プロ、なんだろうけど。

人生何があるかわかりませんね。
ねえ、私の声、貴女が褒めてくれていた私の声、
CDになったよ。
ねえ、私の彼、貴方じゃない私の彼、
あのステージに立つよ。

生きてきて良かったかもしれないなあ。
どうか死ぬまで私が苦しみ続けますように。
歌うように生きていけますように。